フリースクールの上手な使い方と生活の中での位置づけ

 フリースクールは不登校児童のための施設ですが、フリースクールに通っているから学校には全く行かない、あるいは学校に少し通えているからフリースクールはもう利用しないなどと極端な利用方法にこだわる必要はなく、現在の子どもの状態を考えて適切に利用することが大切です。ここでは、子どもの状態と学校、フリースクールのバランスについて考えていきましょう。

 上の図は、縦軸が「家から出られる度合い」、横軸が「学校に行く意欲」をあらわした模式図です。子どもの状態によって色分けしてありますので、一つずつ見ていきましょう。

 まずは、緑色の部分です。ここはフリースクールのみの利用が好ましい段階です。家からは出られるものの、登校の意欲が低く、学校に行きたくない状態です。この状態で無理に学校へ行かせようとすると、子どもにとっては相当なストレスとなります。また、学校へ行けないことを気にして、自分で自分にストレスを与えている状態(自己嫌悪など)になっている可能性もありますので、この段階での登校刺激は心理的な悪影響を考えなくてはなりません。ただ、家から出て活動するエネルギーはあるので、学習や社会とのつながりを維持する目的でフリースクールを利用する選択肢は有力となるでしょう。ここで他者とのコミュニケーションに自信をつけると、少しずつ学校に通えるようになる場合もあります。

 次に、青色の部分です。ここに該当する子どもは家から出ることが難しい段階です。近所のコンビニなどへの買い物程度はできるものの、それ以上の活動が難しいようなケースもここに含まれます。学校に行きたいか行きたくないかは別として、社会とのかかわりに不安を抱えている状態です。まずは自宅若しくは自室という本人が安全だと思える場所で家族以外の他者とコミュニケーションをとる練習を始めます。それが社会とかかわる入り口となります。この状態の子どもに対する支援として、鈴蘭学園では訪問スクールという形で対応しています。年単位で時間がかかることもありますが、根気よく続けていれば少しずつ変化していくはずです。まずはごく狭い範囲での社会体験の積み重ねを目標としていきます。

 続いてオレンジ色の部分です。ここは学校にも通いながらフリースクールも併用する子どもが該当します。併用の仕方は様々で、学校に行かない日だけフリースクールに来る子どもや、フリースクールに来た後、放課後の学校で先生とお話をする子ども、適応指導教室(適応相談教室・相談学級など)と併用する子どももいます。この部分の利用方法は実に様々で、学校と相談することでとても柔軟な使い方ができます。また、この段階に至るまでの過程も子どもによって様々であり、全く学校に通えなかった子どもがフリースクールの支援を経て学校に通えるようになる場合もあれば、もともと週に数回程度は登校していた子どもが、その合間に休息のためにフリースクールを利用するようになるケースもあります。全く家から出られなかった子どもが、学校に通う前の外出練習としてフリースクールを利用することもあります。この段階は学校とのかかわりを取り戻すためにはとても重要な段階で、この段階を飛ばして子どもを学校に戻そうとすると心理的に大きな負担となり、これまでの良い変化が逆戻りしてしまう可能性もあります。子どもの様子を見て、子どもの意見を聞きながら、無理なく支えていくことが大切です。

 最後は右上の部分です。外出に抵抗がなく、学校に通う意欲も十分に養えると、子どもは自発的に学校へ通うようになります。この段階に来たら、私たちは子供を笑顔で送り出します。また、中学校までは学校に通えなくても、高校進学を機に、心機一転、毎日通学できるようになる子どもがたくさんいます。